若手プロデューサー育成「企画塾」
平野
「企画塾」は若手社員を対象に番組プロデューサーとして番組制作を経験するBS朝日独自の教育プログラムです。配属部署に関わらず、営業や経営管理の社員でも番組を企画し制作する体験から視野を広げ、放送局の中核である番組制作への理解を深める機会になってほしいという考えで始まりました。
品川
番組全体の企画立案や方向性の決定、予算管理、制作体制の構築、出演者や関係各所との調整などを行います。本来ならAD、ディレクターやアシスタントプロデューサー(AP)などを経て務めるプロデューサー業務を、一時的ではあるにせよ、早めの段階で経験することができます。私は長く制作の業務に携わってきましたが(現在はテレビ朝日に出向中)、若手が成長できる機会として素晴らしい取り組みだと思います。
平野
私自身も初期の「企画塾」メンバーとして毎週1000本ノックのように企画のネタを苦しみながら考えましたが、当時の経験がその後プロデューサーとして番組制作に取り組む際の基礎となり、今思えば学びが多く貴重な時間でした。
品川
当然ながら、若手社員にはプロデューサー業務の経験がないので、平野さんや私のような中堅社員がサポートしていきます。当時、私が担当したのが営業局の今井さんでした。
大好きなスポーツを軸に
番組をプロデュース
今井
私がプロデュースした『限界を超えろ!~91歳の鉄人トライアスリート~』は、稲田弘さんという91歳のシニアアスリートを追ったドキュメンタリー番組です。私はバスケをはじめスポーツ番組が好きだったので、スポーツという軸を決めて番組作りをスタートさせました。
品川
初めは企画書になってなかったですね(苦笑)。企画書の書き方を伝え、次に考え方を話しました。好きなものを取り上げるだけだと番組として成立しづらく、既存の番組とどう差別化していけるのかなどを話し合いました。スポーツ中継は「企画塾」では扱うのが難しいので、ドキュメンタリーや密着ものがいいかなと。BSはシニアの視聴者も多いのでそちらに振ってみようとなり、今井さんからトライアスロンの稲田さんを候補として挙げる案が出ました。
今井
私は入社以来、経理や営業の仕事をしてきたため制作の経験がなく、分からないことだらけでしたね。一つずつ理解しながら、目の前のやるべきことに必死でした。インタビュアーには元プロ野球選手の山本昌さんに出演いただきました。私の中で競技やアスリートを深掘りしたいという思いがあり、そのためにもプロとプロとが対話したほうが深い部分を引き出せると考えたのです。山本昌さんは自身の長い現役生活での経験を交えながら、稲田さんから秘話を上手に引き出していただきました。その点はうまくいったかなと思っています。
品川
今井さんのような制作経験のまったくない人と番組を作る機会は、私にとっても新鮮な経験でした。基本の「き」から言語化して説明する必要があり、企画の考え方や段取りをあらためて言葉にして伝えることで自分自身の思考が整理され、「なぜ自分はこの判断をしていたのか」という根っこの部分を再確認する機会にもなりました。
新感覚の恋愛リアリティーショー
髙原
私は『恋愛履歴書』という恋愛リアリティーショー番組を企画しました。「顔も声も知らないまま、“履歴書”とチャットだけで恋はできるのか?」がテーマの、男女6人による新感覚の“恋リア”です。幸運なことに1本目のアイディアでOKをいただき、メンターの平野さんと相談しながら、約8週かけて草案を完成させました。
平野
企画の完成度は高かったですね。当時私は編成制作ビジネス部の所属でプロデューサーとして番組制作の仕事をしていたのですが、髙原さんはとても戦略的でマーケティング能力が高いなと感じました。元々“恋リア”がすごく好きで、ありとあらゆる番組を見ている。その中で「これはまだやっていない」といった切り口を見つけ出してきて、企画に落とし込んでいましたから。
髙原
私は編成の業務に就いた経験があり、多少なりとも局のプロデューサーに求められる役割を理解していました。とはいえ、実際に番組を形にするのは初めてだったので、こまかな部分は「企画塾」を通して認識していきました。苦心した点を挙げるなら、“恋リア”の内容を30分番組に収めるのが一苦労でした。
平野
髙原さんと一緒にやるにあたって、私は制作のテクニックを教えることよりも、迷ったときに自分がぶれずに表現したいことを追い掛け続けることの大切さをきちんと伝えよう、という思いでやらせてもらいました。そこを髙原さんも受け止めてくれたようで、実際に番組内でやりたいことが実現できたのは素晴らしいなと感じています。
番組の企画で大切なこと
品川
番組作りにおいては、誰かの真似や既存のものではなく、企画に独自性があることが大切だと思います。それが成立しているかどうかよりも、まず一生懸命に自分自身で考えた企画かどうかが重要かなと。もちろん、客観的な視点も必要ですが。
平野
そうですね。あまり狙いすぎると空回りしてしまうこともあるかもしれませんが、その企画ならではの独自性は必要だと感じます。企画というのは“人”が表れる気がします。その人が根源的に興味を持っていることや、伝えたいこと。そういう部分をきちんと表現しているほうが、人間味があっていいんじゃないかなと感じます。自分の好きなこと、興味のあることを突き詰め「自分が大事にしている価値観ってなんだろう?」と掘り下げていく。
品川
好きじゃないと掘り下げられないですよね。それがないと、視聴者の期待を上回る番組にはならないような気がします。
今井
今回、番組制作の過程で海外との契約書のやり取りに苦労したり、企画の選定やタイトル決めなども難航しました。それでも自分の興味のあるスポーツという軸は、ぶらすことなくできたのかなと思います。
髙原
私もリアリティショーという、やりたかったコアを実現させることができました。今まで「いつかやれたらな…」とふわふわした気持ちだったのが、番組を制作するにあたって本当にやりたいことは何だったのか、と考える機会になり、自分が大事にしているものが明確になりました。今後の業務にも通じる気づきだと思います。
今井
私はこれまで制作の業務はあまり分からず「大変そうだな…」と横目で見ているだけでした。「企画塾」の経験を通して、少しでも苦労を知ることができたことは大きかったです。営業として制作との社内調整をするときに、相手のことを想像しながら業務を進めるきっかけになったと思います。
品川
制作の仕事は、発想だけではなく、形にするまでに多くの苦労があります。その際のトライ&エラーの感覚を知っていることは財産ですし、プロデューサーに限らず営業、編成、技術など、どの部署に進んでも必ず役に立つ経験のように感じています。
平野
2人にはBS朝日を新たな方向に引っ張る存在として、これからもっと活躍してもらいたいと思います。